ネットカフェ難民と貧困ニッポン/水島宏明
今日紹介するのは、私の中でもかなり思い入れのあるこの本です。
ネットカフェ難民の状態に陥っている複数の方へのインタビューを通じて、そこに至るまでの経緯やその背景を紹介した本です。ドキュメンタリー作品の中でも、インタビューの対象となった方に寄り添ったとても良い本だと思います。著者の水島さんは、東京大学卒業後、札幌テレビを経て日本テレビ放送網に入社されました。2012年からは法政大学の教授をされています。
発売されたのは2007年の冬ですが、私はその翌年の秋にこの本に出会いました。
ちょうどその頃、サブプライムローン問題の余波を受け、米大手投資銀行グループのリーマン・ブラザーズが破たんしました。いわゆるリーマン・ショックというやつです。
世界的な金融危機の影響は日本にも及び、製造業等に従事する日雇い派遣労働者が解雇されていく、いわゆる派遣切りが広がっていきました。そして、冬には東京の日比谷公園で社会活動家の湯浅誠さんを村長とした年越し派遣村が開かれました。
春には就職活動を終えた学生に対し、一部の企業で発生した内定切りという現象が社会問題になりました。記憶している事案は、内定を出したものの、急激に業績が悪化したため、内定を取り消さざるを得なくなったというものでした。
当時、貧困問題に関しては自己責任論に対する批判が盛んに言われた記憶があります。
働くことができない、あるいは、継続して働き続けることができず、結果として貧困に陥っていくのは、必ずしも本人の努力が足りないからではないというものです。
この本とは直接関係ありませんが、貧困問題、そして自己責任論に対する批判に通じるところがあると思いますので、この本にも登場する湯浅誠さんのTEDxTodai2013でのスピーチの一部を紹介します。
考えてみていただきたい。
路上の人ってのは、皆さんにとっては何か遠い、別の世界の人のように感じるかもしれません。
だけど、もし皆さんが早くに親を亡くして満足に学校に行くこともできなかったとしたらどうだったでしょう。もし暴力を受けて育って、頼れる大人に一人も出会わないままに大人になってしまったとしたら、皆さんは今の皆さんになれたでしょうか。
貧困っていうのはお金の問題だけじゃないんです。
特に、自分と同じ若い世代の人には是非読んでいただきたい一冊です。
なお、TEDxTodai2013のスピーチは以下のリンクからも見ることができます。