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河童・或る阿呆の一生/芥川龍之介

今日は、以前ブックオフで250円で買った「河童・或る阿呆の一生」を紹介します。

 新潮文庫から出ているものです。

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標題の2つの作品の組み合わせが良いですね。この他にも、「蜃気楼」「歯車」などを含め全6作品が収録されています。

 

有名な作品なので説明は不要かもしれませんが、「河童」は普通の生活を送っていた人間がある日河童の世界に迷い込み、河童の視点で世界を眺めたような作品になっています。

河童の世界では物事の概念などが人間のもの異なっており、人間が正義とか人道とかについて真面目に考えていることを、河童たちは腹をかかえて笑ったりします。

芥川龍之介らしい、人間の世界をシニカルに表現した点が好きです。

 

「河童」の中では、"僕"と河童の"トック"の以下のやりとりが何となく好きです。

「ふん、君はこの国でも市民になる資格を持っている。・・・時に君は社会主義者かね?」

僕は勿論qua(これは河童の使う言葉では「然り」という意味を現わすのです。)と答えました。

「では百人の凡人のために甘んじて一人の天才を犠牲にすることも顧みないはずだ。」

「では君は何主義者だ?だれかトック君の信条は無政府主義だと言っていたが、・・・」

「僕か?僕は超人(直訳すれば超河童です。)だ。」

 

或る阿呆の一生」は51の場面から構成される芥川の半自伝的な作品です。一時は順風満帆な生活を送りつつも、生涯の多くを憂鬱な気分で過ごすような感じが滲み出ている作品です。

 

以下、「或る阿呆の一生」の中で好きな表現を紹介します。

架空線は相変わらず鋭い火花を放っていた。彼は人生を見渡しても、何も特に欲しいものはなかった。が、この紫色の火花だけは、ーー凄まじい空中の中の火花だけは命と取り換えてもつかまえたかった。

 

では、次回もお楽しみに。